ちょっと一息:海外駐在員コラム
アメリカ、ヨーロッパ、シンガポール、そして中国より現地での体験談や話題など様々な情報をお届けいたします。
ヨーロッパ編
- 第4話 「出羽守(でわのかみ)症候群」
- 2004/9/14
- AT&T 英国駐在員 八文字(ヤツモンジ)ヤスオ
英国の列車(BR)と地下鉄(Underground)は当地の邦人の間で評判が良いとは言えません。
その理由は、遅れはあるし、キャンセルはあるし、その上料金が高い。地元の方々はそんなことに慣れ切っているので、何があっても駅員に言い寄ることもありません。でも我々日本人は世界に冠たる“時間に飛び切り正確な列車・地下鉄サービス”に慣れている事もあって、当地のサービスも同じようなものと(勝手に?)思い込んでいるので、大抵痛い目に遭うことになります。列車の遅れ、キャンセルの原因は殆ど人間系の問題で、例えば交代運転手が定められた時間に現れなかったとか、定期メインテナンスが予定通り終了しなかったとか、そんなことに因るもの、と同僚から聞かされると、しばし絶句。このような原因は現地人の間では周知の事実らしいのですが、そんな時我々は、「これは酷い。日本ではこんなことはありえない。日本ではサービスが格段に良かった」、とぼやくことになります。
昼時の地元レストランでのある日本人出張者お2人連れのご経験談。次の予定時間まで約40分、その間に軽く昼食を済ませるつもりで地元レストランに入ったものの、なかなか注文は取りにはこないし、注文したものの料理は出てこない。舌打ちしながらキョロキョロしながら、手を挙げてウエイターを呼んで催促することを2、3度繰り返したそうです。すると、店のウェイターではなくて、なんと隣のテーブルの地元のお客から、「そんなに催促しても早くならない。アメリカ系のファースト・フード・レストランへ行くべきだ」、と不機嫌な表情でたしなめられたそうです。お二人は、「この国ではイライラの態度を露骨に見せたりすることはタブーなんですね。日本では20分もあれば早飯が出来たのに」、とぼやいていました。
当地に住み始めて暫くしますと、日本で当たり前のことがこの国ではそうではないことが沢山見えてきます。「待たされる窓口」(郵便局、駅、銀行で、目の前に長い行列が出来ているのに隣同士お喋りしている事務員も見かけます!)、「口座開設に面倒な書類を要求する銀行」、「診療予約を取るにも数週間待たされる病院(かかりつけの家庭医による第一次診療後に専門医の診療が必要な場合。入院ともなれば年単位の待ち時間も)」、「数週間を要する家具配送」、「店員がまばらで質問のためにも列を作ることのある買い物」、「絨毯が張ってあるバスルーム(お風呂場)」、等々、枚挙にいとまがありません。そんなことが分かってくるにつけ、我々邦人は「日本ではそうではなかった。日本ではもっと便利だったのに」、とぼやきつつ、日本が懐かしくなるものです。これが「出羽守(でわのかみ)症候群」と呼ばれるものです。出羽海(でわのうみ)症候群とも呼ばれています。同時に、この地での遣り方はこの地の人々に歴史的に受け入れられてきたもので、習慣、日常となっているものであり、一朝一夕に変るものではないので諦めるしかないことを悟ります。“英国で快適に仕事する、暮らす秘訣”を訊ねられたある駐在経験の長い方が、「DIY(Do It Yourself)と忍耐」と仰っていましたが、私自身も身をもって納得されられつつあります。ここでのDIYとは、“期待通りには進まないケースが多いので重要案件では必ず代替案を自分で用意しておく”ということです。例えば遅れられない重要なミーティングであれば、遠隔地の場合は前泊するとか、最低30分前に目的駅に到着するように地下鉄に乗るとか、また列車・地下鉄キャンセルに備えてタクシーで駆けつけることも想定して財布の中身を確認しておくとか、そんな備えが必要です。
さて今回の「完全無欠な欧州人とは?」
The perfect European should be organized as a Greek.
「ギリシャ人のように段取りよく!!」
この夏のアテネ五輪。競技場屋根の建設が間に合わず結局“屋根なしプール”で五輪に突入したあの遣り方が所謂“ギリシャ的暢気さ”です。
ギリシャからの“問題なし”との回答に関しては確認作業が欠かせません。
ところで今回の五輪で日本が史上最多のメダルを獲得したことは欧州に住む我々も鼻が高くなったものでした。ただし、当地のBBCテレビでは柔道、女子レスリング、野球、と言った英国選手のメダルが期待できない競技はテレビ放映がありませんでしたし、当地の日本語TV放送(NHK番組を中心に放送するJSTVと言う有料放送があります)は放送権の制約を受けて五輪関係の映像は無に等しいものでしたので、これらの競技での日本人選手のメダルラッシュを目にすることは出来ませんでした。一方、日本に滞在する英国人にとっては、得意とするボート、馬術、自転車で自国選手の活躍を日本のテレビで目にすることは殆ど無かった筈であり、またBBCの国際放送が日本で放映されていたとしても五輪関係の映像はカットされていた筈ですので、彼らはしらけた気分であったろうと想像できます。各国放送局の放映権の壁のなせる業ですが、この国際化の時代であれば何か解決策があって欲しいもの、と切に感じたものでした。
