ちょっと一息:海外駐在員コラム
アメリカ、ヨーロッパ、シンガポール、そして中国より現地での体験談や話題など様々な情報をお届けいたします。
ヨーロッパ編
- 第7話 「欧州の『壁』 − 英国人の“働き振り”と障害対策」
- 2005/8/30
- AT&T 英国駐在員 八文字(ヤツモンジ)ヤスオ
この夏ロンドンでまたテロが起こり世界はますます刺々しくなっています。以前は地下鉄内で他人を意識することもなく大声で談笑したり、時には食べたりと“口”を動かすおおらかな乗客が結構目に付きましたが、最近ではお互いの荷物を監視し合うかのような疑いの“目”が気になります。あれだけの事件後であれば当然のことと受け止めて、なるべくなら地下鉄は遠慮しての外出を心がけております。
今回号では「現地人の働き振り」に関してある実話を通しての欧州での壁とその対策、特に障害時対策、に関して取り上げてみました。ある日5時過ぎにある日系企業欧州本社を訪問させていただきました折、日本人ITマネージャーのAさんが浮かない表情で仰るには、「イタリアのユーザーサイトの足回り回線(専用線)がダウンしたので目下バックアップのISDNで稼働しているが、担当者の現地人スタッフは定時で帰宅してしまい自分の思い通りに物事が進まなかったのが残念」とご不満げ。状況は次のようなことでした。
−翌日は締め日なのでトラフィック増加が見込まれるためISDNバックアップ回線では業務への支障が出る懸念があった、そこで
−メインの専用線が何とかその日中に復旧してくれる事を期待して、
−専用線のその日中の復旧という期待をその担当者に伝えて、イタリア側での夜間のオンサイトでのPTT(現地の専用線提供通信会社)作業も視野に入れて、その受け入れのための現地ITスタッフの待機まで含めたアレンジを要請しておいたが、
−5時過ぎにその担当者が「現地PTTはPD中(問題判別中)で、技術者によるオンサイト作業が今夜発生するものか結論が出ておらず、作業開始・終了時間があいまいな
現状ではイタリア側に待機要請は難しい。イタリア側も待ってくれたが既に6時過ぎで彼らも突然の夜間待機には難色を示している。明朝一番で再開の予定」との状況説明を残して帰宅してしまった、というものでした。
後日談でAさんがしきりに仰っていたことは、「平常時には日本人と英国人の働き方に大差は感じないが、就業時間を超えた場合の対処の仕方、突発的事象へ取り組み時に“壁”を感じる。日本であれば残業も厭わずに時間の許す限り粘ってより良い状況にもって行こうとするが、英国人は終業時間を過ぎた後は適当なところで打ち切ってしまうので、ここに大きな壁を感じるし歯がゆい。今回はISDNバックアップがあって本当に助かった。これまで専用線のメインリンクは大した障害もなく安定稼働していたので、赴任当初はこのバックアップは本当に必要なものか疑問に思っていた。しかし今回このバックアップがあったお陰で翌日午前中は何とか持ちこたえ、午後一番には専用線が復旧したので業務への影響は最小限に抑えられた。担当者は技術的にも優れており、日頃の働きぶりに好感を持っていたが、時間外労働に関しては自分の認識が違っていた。現地人スタッフの個人的頑張りを過度に期待しての障害時対策は危険であることを認識した。」との事でした。
この労働慣行の違いは当地の日本人社会ではよく話題に上がるものです。よく指摘的される点は、「チ‐ムワークよりジョブ・ディスクリプション優先の仕事振り(よって記載のないものには手を出さないし、境界線あたりに落ちるものには及び腰となる)」、「時間外労働は事前合意が前提(月初なりまたは週初めに。ドイツでは残業要請が度重なると上司が訴えられるケースもあるそうです)」、「病気休暇は有給休暇とは別枠で取得可能(よって軽い風邪でも休暇を取る傾向あり)」、「長期の夏季休暇(連続2週間が一般的、中には3、4週間のケースも)」、「勤務先への忠誠心の違い」、「転職率の高さ」等々です。異なる労働慣行に配慮した「障害時対応の確立」に日本人ITマネージャーの方々が心砕かれていますが、Aさんのお話の様に、「重要なN/Wインフラの障害対策として、それも基幹業務の場合は特に、別系統バックアップを装備することは必須。自動起動バックアップを持たずに、現地人スタッフへの過度の期待や依存は特に“就業時間外での対応”に難があり、実際的ではない。」というのが大方のご意見です。
すこし硬い話題となりましたので最後に英国流なぞなぞを。
「最初にcrawl(這い這い)、次にwalk(歩く)、その後speak(話す)のは赤ちゃん。
ではその逆をたどるものはなんでしょう?」ヒント:「身近な存在です」。答えは次回号で。
