ちょっと一息:海外駐在員コラム

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ヨーロッパ編

第12話 「英国人はEnglish?それともBritish?」
2007/10/29
AT&T 英国駐在員 八文字 保男

英国で出身地が話題になり相手に確認する際「English」という単語を使うと相手の思わぬ反応に戸惑うことがあります。相手がスコットランド出身者であれば間違いなく「No, I’m not English. I’m Scots」となります。ウェールズ出身者でも同じようなもの。我々外国人にとってはスコットランドでもウェールズでも英国には間違いないのだから「英国人」を表わすと教えられた「English」という単語を使うことに何の抵抗もないのですが、この国ならではの長い抗争の歴史と拘りがありますので、「England」、「English」の意味するところをよく理解しておく必要があることに気がつきます。この国を「多民族国家」と見なす感覚は外国人(日本人に限りませんが)には希薄なようです。

日本語では「英国もしくはイギリス」と呼ぶこの国の正式名称は英語では「the United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland」、直訳すれば「グレートブリテンと北部アイルランド連合国」となります。グレートブリテン島のイングランド、スコットランド、ウェールズ、それに加えてアイルランド島の一部である北アイルランドの連合国と言うことです。通称は「the Unite Kingdom」、略称「UK」。国旗は青地に縦横斜め・赤白二重の十文字のユニオン・ジャック。イングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランド、それはかって血で血を洗う抗争に明け暮れた王国たちであり、長く激しい抗争を経て ウェールズ、スコットランド、アイルランドはそれぞれ順に16世紀半ば、18世紀初頭、19世紀初頭にイングランドに併合されました。その後20世紀になってアイルランドが 北部の一部地域を英国領として残したまま独立して現在に至っています。因みに、白地に赤十字がイングランドの旗、青地に斜め白十字がスコットランドの旗、白地に斜め赤十字がアイルランドの旗。この三つを組み合わせるとユニオン・ジャックの出来上がりとなり、イギリスという国の成り立ちを端的に表わしています。悲しいかないち早くイングランドに併合されたウェールズは混合図柄に組み込まれるべき独自の旗をすでに失っていたようです。当然ながらスコットランドにしてもウェールズにしても併合の歴史の中でその独自性を保とうとする活動が活発に継続されてきました。スコットランドでは1997年の住民投票の結果で独自議会設置賛成派が7割以上を占めました。それを受けて外交、安全保障、経済政策では従来どおりイギリス中央政府が一元的な権限を保持するものの医療、教育、福祉、環境、治安、運輸等々内政政策では自立的な立法機能をもつことになりました。 ウェールズを訪れますと道路標識はウェールズ語と英語の併記となっており民族の象徴である独自の言葉を消してはならないという強い意志を感じます。

英国で最も盛んなスポーツはサッカー。来年の欧州選手権への参加権を争う最終予選が いよいよ最終段階を迎え大変盛り上がっています。このサッカーにおいても英国の歴史が色濃く反映されています。ワールドカップや欧州選手権に参加できるチームはそれぞれEngland、Scotland、Wales、Northern Irelandであり国として扱われています。英国として国を代表する統一チームを結成することはこれまでもなかったし今後も絶対ありえないと言われています。それぞれが国であるとの意識が強くFIFA(世界サッカー連盟)にもそう認めさせている点には感心します。「それぞれのTeamから優秀な選手を選抜してUK統一代表Teamを送り出せば本大会での優勝の可能性が大きくなるのでは」と思うのは どうも無知な外国人の勝手な発想のようでして、あるスコットランド人の知人が堂々と 言い放った「イングランドとロシアの試合ではロシアを絶対応援する」を耳にしてスコットランド人がイングランド人に持つ複雑な感情を今更ながら思い知らされました。

過去の過酷な歴史からEnglandに対して複雑な思いを抱く非併合国のスコットランド人(Scots)、ウェールズ人(Welsh)、アイルランド人(Irish)はEnglandやEnglishと言う 言葉自体に拒否反応を持ってしまうのは仕方の無いこと。そこでこの拒否反応を回避するために「英国」を意味する場合にはEnglandではなくてThe United Kingdom (UK)を、 「英国人」を意味する場合にはEnglishではなくてBritishを使うことは極めて大切なことです。「Britishですか?」と問われてそれでも「いやScotsだ, Welshだ, Irishだ」と反論されることもありますがEnglandやEnglishを使うよりは余程好感を持たれて会話も弾みます。

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