最新動向レポート

第67回 パソコンのカーソルに情報配信する新発想のパーソナルメディア

  • 株式会社 クロッセージュ 代表取締役
  • 神奈川工科大学 情報学部 非常勤講師
  • 岡田 誠 氏
  • http://www.xsage.net/

メールマガジンに代表されるようにインターネットを利用した情報配信には、さまざまな形態がある。それらの多くが配信する広告や情報の効果を高めるために、受信者の個人情報をベースにしているのに対し、個人情報を必要とせずに有効な情報配信を実現するサービスが開始された。その全容を明らかにしてみた。

(2007/6/5)

−− マウスのカーソルに情報を配信するサービス「Seel(スイール)」の提供を開始されました。とてもユニークなサービスですね。サービスを開始された背景を聞かせてください。

岡田インターネットを利用して、多くの企業が情報や広告を配信しています。そういった状況の中で、より効果的に情報や広告を配信するには、つまり、インターネットの利用者にとって読みたい情報を提供する、あるいは、潜在的な購買層にある商品の広告を配信するための1つの手段が個人情報の取得です。インターネットのサイト上で訪れた人にアンケートに答えてもらったり、会員登録をしてもらったりするなどして個人情報を入手して、その情報に基づいてマーケティングを行ったり、さまざまな情報や広告を配信したりしている・・・。しかし、個人情報を多く入手してストックすればするほど、情報漏えいや情報流出のリスクにどう対処していくかが重要な問題になります。情報漏えいや情報流出は、企業の信用失墜に直結しますし、信用を失った企業が企業存続の危機に直面した事例も最近では増えています。

−− 確かに個人情報があれば効果的なマーケティング、より効果的な情報や広告の配信が可能になります。ところが、個人情報を取得すれば、常に情報漏えいや流出のリスクがある。そういった問題をどう考えていくのかが、サービスの開発の出発点にあるということですか。

岡田個人情報は入手した瞬間から「守らなければならない」対象になる。それならば、個人情報を取得せずに、持たずに効果的な情報や広告の配信ができないか、と考えたのです。そもそもインターネットの利用者の多くは個人情報を提供したくないと考えているでしょう。反対にサイトの運営者や企業は個人情報を欲しがっている。ただし、個人情報を欲しがって手に入れた企業も、その個人情報を果たしてどこまでマーケティングが効果的な広告活動に活かしているのかは疑問が残ります。簡単に言い切ってしまえば、個人情報の入手が目的なのではなく、個人情報そのものが目的なのでもなく、個人情報を活用して自社の製品を売ること、効果的なマーケティングを行うことが本来の目的であるはずです。そう考えると個人情報を入手しなくても、効果的な情報や広告の配信ができて、物販などに結びつけばいいのです。利用者側からすれば、必要な情報、欲しい情報を「自分が何者かを明かすことなく」受け取ることができるのでいいのです。そんな考えから生まれたのが、誰でも簡単に使えるパーソナルメディアであるSeelなのです。

−− 具体的にはどういったサービスなのですか。

岡田マウスのカーソルに小さなウィンドウが表示されて、そこに企業からの情報や広告などが表示されるというものです。利用者がマウスを振れば、その表示された情報はすぐに消えます。Seelでは、まず、利用者から個人情報を取得しないかわりに、利用者には自分にとって有意義な情報を得るための最低限の情報、つまり性別や郵便番号などを入力してもらっています。しかも、利用者はどの企業やサイトから情報提供を受けるかを自分で選択できます。「あっ、この企業の情報が欲しいな」と思ったら、その企業からの情報をSeelで受信するという設定にすればいいのです。もちろんSeelに情報を配信する企業や配信者は審査制ですから、怪しげな企業から情報が送られてきたり、不要なスパムが大量に送りつけられたりすることもありません。

−− ある企業やサイトの情報が欲しい場合、多くの人はその企業やサイトが発行しているメルマガに登録して、それを受信しています。

岡田メルマガを受信するには、利用者はメールアドレスを企業なりサイトの運営者に提供しなければなりません。スパムや迷惑メールを考えると、メールアドレスを提供するのに二の足を踏む人も多いでしょう。ところがSeelならメールアドレスの登録は必要ありません。その意味では、メールアドレスを提供してもいいから情報を受け取りたい人はメルマガに登録すればいいし、メールアドレスを提供するのは気が引ける、もっと手軽に情報を入手したいという人はSeelを利用してくれればいいと考えています。

また、企業やサイト運営者にとっては、このSeelを情報配信ツールとして活用していただきたいのです。Seelを活用すれば、それを使って情報を提供する企業やサイトと、その情報を入手したいという利用者が結びつきます。その企業やサイトが、自社のファンを作るための情報配信ツールとして使うことができるのです。利用者にしてみれば、自分の個人情報を明らかにしなくても、自分が興味のある企業、その情報が欲しいなと思うサイトを選択して、そこからの情報を手軽に入手できる・・・。その意味で新しいパーソナルメディアであると考えています。

−− 今後はどういった展開を考えていますか。

岡田企業やサイトの運営者とインターネットの利用者を結びつけるBtoCの情報配信ツールとしての利用だけではなく、いま話題のバーチャルコミュニティ Second Life(セカンドライフ)内での新たな手法による広告展開を準備計画中。また、今後はパーソナルなメディアとして、より楽しく使ってもらえるような展開として、マウスのカーソル横に表示させる小さなウィンドウに容量の小さい動画再生や音楽が流れるようになるでしょう。

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