最新動向レポート
第71回 フェムトセル、シン・クライアント……最新技術で変わるネット環境
- 株式会社日経BP社 日経NETWORK編集長
- 藤川 雅朗 氏
- http://itpro.nikkeibp.co.jp/NNW/
ネットワーク技術者にとっての悩みは、最新動向を幅広く押さえつつ、一つ一つの技術について深く知る必要もあることだ。こうした悩みに応える雑誌として広く知られているのが、『日経NETWORK』だ。“幅広い知識を、わかりやすく紹介”し続ける藤川編集長に、読者ニーズの動向などをうかがった。
(2007/10/18)
−− 媒体としての特徴はなんでしょうか。読者層はどのような方々なのですか。
藤川『日経NETWORK』は、ネットワーク関連の技術について、わかりやすく読者に伝えることをテーマにしています。難しくなりがちな話を、いかにわかりやすく伝えるか。複雑な概念をイラストで簡略化して紹介したり、丁寧な解説をすることで、読者の理解を助けています。全体としては、ベーシックな技術の紹介が多くなっていますね。
もちろん、最新の技術についても積極的に取り上げています。しかし、単に話題として取り上げるのではなく、“その技術はどんなものか”“その技術を用いることで、何ができるようになるのか”といって点について詳しく解説するようにしています。
こうしたテーマで誌面を作っているためか、読者層は非常に広くなっています。ネットワークの初心者、資格試験の受験者、現場の運用管理者……。ネットワーク関連の技術に興味のある方に、幅広く読んで頂いています。誌面と連動して運営しているWebサイト「ネットワーク・エンジニア倶楽部」では、ネットワークに関連した技術解説を多数掲載するとともに、押さえておくべき最新ニュースやトラブルへの対応に役立つコマンドなども紹介しています。こちらにも現場の運営管理者など、多くの方からアクセスして頂いています。
−− 最近の読者は、どのような分野に関心をお持ちなのでしょうか。
藤川全体の傾向としては、セキュリティー分野への関心が相変わらず高いようです。特集などへの反響も、大ききなものがありました。また、2006年末から2007年前半にはNGN(Next Genaration Network)への関心も非常に強かったですね。
当社では誌面と連動する形でネットワーク関連のイベントをいくつか開催しています。今年の春に行ったイベント「NET&COM 2007」では、NGNの企画ブースが多くの方から注目を集めました。会場内でNGN環境を想定したアプリケーションを動かし、来場者の方に触れて頂くようにしました。概念としてわかっていても、実際のNGNでは何ができるのか。“NGNを体感できたのは大きかった”と来場者の方に言って頂くことができました。NGNに限らず、新しい技術に対する関心は、相変わらず大きいと思います。こうした方のニーズに応えていくことも、常に心がけています。
−− 現在、藤川編集長が注目している技術分野は、どのようなことでしょうか。
藤川2つあります。まず一つが、「フェムトセル(Femtocell)」というモバイル関連の技術です。フェムトセルというのは、超小型の携帯電話基地局のことを指します。ブロードバンドルーター程度の大きさで、FTTHに接続して使えるようになっています。ご承知のように、携帯電話では基地局のカバーエリアを充実させることが重要な問題になっています。全国をもれなくカバーすることに加え、昼夜人口の変動やイベントによるユーザー数の増減なども考慮に入れて、基地局を設置していく必要があります。しかし、現在のタイプの基地局を増やすには、物理的/コスト的な制限があるのも事実です。
フェムトセルは、こうした問題を解決する技術です。ユーザーが希望する場所に基地局を設置できるようになるため、上記の制限をクリアできます。カバーエリアの充実に悩むキャリアにとって、大きなメリットのある技術です。
また、フェムトセルから回線網まではIP経由で通信ができるのも特徴です。ユーザーが量販店でフォムトセルを購入して自分で設置できるようになれば−現在は法令上の問題で許されていませんが−導入したいと考えるユーザーが多く出てくることでしょう。さらに、キャリアはフェムトセル経由の通信の料金を割り引く考えがあるようです。そうなれば電波状況の改善に加えて、携帯電話料金を下げることもできそうです。
こうしたメリットを持つフェムトセルは、今後ブレイクする技術だと考えています。すでに一部のキャリアでは設置が始まっています。
−− もう一つの注目分野は何ですか。それも新しいものですか。
藤川 概念自体は以前からあったが、技術の進化によって大きく変貌した……というものに、シン・クライアント(Thin Client)があります。 シン・クライアントという概念/技術が初めて登場したときは、メインになるサーバーにLAN経由で接続し、専用端末で操作する、という形態でした。しかし、周辺技術の進化があって、現在のシン・クライアントは別物に変わっています。
LANだけではなくWAN経由でも利用できるようになり、専用端末ではなくPCやスマートフォンで利用できるようになり。使い勝手が上がるのと同時に、導入の容易さ、セキュリティの強固さも向上しています。実は、導入する企業も急増中で、これから“来る”分野だと考えています。このシン・クライアントが、二つ目の注目分野ですね。
以上で紹介したフェムトセル、シン・クライアントについては、当社が主催するイベント「IPコミュニケーション&モバイル 2007」 「Security Solution 2007」(いずれも、2007年10月24日〜26日・東京ビッグサイト)でも大きく取り上げ、紹介する予定です。今後も、誌面/Web/イベントなど、複数の機会で技術動向をわかりやすくお伝えしていきたいと考えています。
