ネットワーク・セキュリティー講座
第9回 「 ディザスタ・リカバリー 」
重要性が再認識されるディザスタ・リカバリー
(2006/4/14)
あらためて注目されはじめたディザスタ・リカバリーの重要性
「ディザスタ・リカバリー」という言葉は、「ディザスタ(Disaster)」と「リカバリー(Recovery)」を組み合わせた用語です。ディザスタとは「天災・災害」で、リカバリーは「復旧・修復」です。つまり、天災や災害からの復旧・修復という意味になります。ITシステムにおいては、天災や災害でダウンしてしまったデータセンター、企業におけるサーバやネットワークなどのシステムを復旧する作業や仕組みをこう呼びます。今、このディザスタ・リカバリーの重要性が、あらためて指摘され始めているのです。
ITが普及した現代の社会・経済システムにおいては、多くの企業群が「ネットワーク」によって相互に複雑な結び付きになっています。たとえば街中にあるスーパーマーケットでも商品の売れ行きを管理し、そのデータを物流の拠点や製造工場に送り、在庫や生産量を調整するなどして、「ムダのない」仕組みを作り上げています。同じように多くの企業は、支社や支店との間、その取引先となる企業や関連会社などとネットワークで結ばれ、オンラインで受発注業務が行えるようにしていたり、一般消費者向けにオンラインショッピングのサイトを開設していたりします。
このように高度にネットワーク化された社会・経済においては、ある企業のビジネス・システムがダウンしてしまうと、その影響が関連する多くの企業に「連鎖」することが予測されます。その視点で考えれば、企業におけるディザスタ・リカバリーへの取り組みは、もはや「最重要視すべき経営課題」となっているのです。
連鎖的被害を最小限に食い止める!それこそが今、求められていること
ディザスタ・リカバリーを考える上で、心に留めておかなければならないことは、天災や災害はいつ発生するかわからないということです。たとえば、昨年、アメリカではカトリーナやウィルマといった大型ハリケーンが甚大な被害をもたらしました。一昨年には日本でも新潟県中越地震が発生したほか、西日本での豪雨や昨年の冬の雪害など多くの自然災害にも見舞われました。自然災害を予知することは困難ですが、じつは頻繁に発生している・・・。従来のディザスタ・リカバリーの考え方では、予知することができない自然災害に対して、万が一、それが発生し企業のITシステムが何かしらの被害をこうむった際に「素早くそのITシステムを復旧・修復させること」が重要視されていた傾向があります。ところが、先述の通り、ITシステムが多くの企業にとっての重要な経営インフラになったこと、また、企業群がネットワーク化され、ある企業のビジネスが寸断することで、関連する多くの企業に「連鎖反応」を及ぼすことから、ここにきて「天災・災害の発生時にも」「自社のビジネスをストップさせずに」「一般の利用者や消費者、関連会社にかかる『連鎖的被害』を最小限に食い止める」ためのディザスタ・リカバリーが求められるようになったのです。
企業の社会的責任の視点からもその重要性が声高に叫ばれている
さて、それでは具体的には、ディザスタ・リカバリーの対策をどう構築すればいいのでしょうか。それには、じつにさまざまな手法があり、セキュリティーシステムに関連した多くの企業がいくつものソリューションを提供しています。一般的には、企業の基幹システムの「大動脈」ともいえるネットワークを「冗長化」しておくことが不可欠です。その他にも、たとえば遠隔地にある支社・支店と本社におけるデータベースを常に同期させ、バックアップをとるなどしておけば、万が一、本社ビルが倒壊するような災害が発生しても、支社・支店のデータベースと冗長化されたネットワークを利用して、ビジネスを直ちに再開し、継続性を確保することが可能となるでしょう。 また、もっと身近なことでは、たとえばある社員が担当している顧客情報など重要なデータの管理が「社員まかせ」で、その「社員のパソコンに保存されているだけ」といったことはないでしょうか。データを一元管理できるシステムを構築して、そのデータベースをバックアップしておけば、スムースなディザスタ・リカバリーを実現できるようになるはずです。
今、新たに求められているのは「連鎖的被害を抑え込む」対策です。言い換えれば自社の「事業の継続性を確保する、保証する」ためのディザスタ・リカバリーという考え方です。ダウンしたシステムをいち早く復旧・修復することは、もちろん大切ですが、それ以上に万が一の天災・災害発生時にも自社のビジネスがストップしないように、あらかじめ対策を施しておく・・・。自社のビジネスがストップすることで一般の利用者や消費者だけでなく、多くのビジネスパートナーにまで影響を与えるという枠組みの中にあっては、ディザスタ・リカバリーは今や「企業の社会的責任(CSR)」の視点から、その重要性が強く叫ばれているのです。
