AT&Tのサービス導入事例−ネットワーク・アウトソーシング−
USER事例3 森永乳業株式会社様
広域イーサネットとIP-VPNを直結したWANを構築
乳製品・飲料等の製造・販売を行う森永乳業株式会社様(以下、森永乳業)は、2004年9月から国内242カ所の拠点を結ぶ自社ネットワークの大幅刷新を実施している。新しいWANの構築を担当したのがAT&T。広域イーサネットとIP-VPNを直結する「インターワーク」の仕組みを導入し、さらにフレッツ網をバックアップ回線としつつ、内線電話のVoIP化に活用する最先端の複合型ネットワークとすることで、多くのメリットを同時に実現することに成功している。
回線帯域の増強・信頼性向上・コスト削減を同時に実現- インターワークで柔軟なWANを構成する
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森永乳業では、以前から国内の各拠点を結ぶWANを構築・運用していた。従来の構成は、広域イーサネットとIP-VPNの“二本立て”。各拠点の規模や業務内容に応じて、二つのサービスを使い分ける形としていた。
二つのネットワークを併用していたのには、2つの理由がある。まずは経路制御の問題だ。森永乳業の国内拠点は200を超える。全拠点を単一のネットワークで接続すると、パケットの経路制御が難しくなる。もう一つは、コストの問題。拠点ごとに規模や業務内容が異なるため、アクセス回線に求められる帯域幅は異なる。広域イーサネットが必要な拠点もあれば、IP-VPNで十分な拠点もある。こうした違いを無視してすべての拠点に同一のネットワークを導入すると、割高になる拠点も出てきてしまう。そこで、拠点ごとに異なるサービスを使い分け、これらの問題をクリアすると同時に耐障害性も確保していたのだ。
しかし、この構成には徐々に問題が生じてきた。広域イーサネットとIP-VPNは直接接続されておらず、異なるネットワークに接続している拠点間で通信を行いたい場合には、同社の「さがみ野研究・情報センター」(神奈川県座間市)を経由する必要があったためだ。導入当時には問題なく動作していたさがみ野研究・情報センターへのアクセス回線も、グループウェアの導入などによりWANのトラフィック量が増加するにしたがってボトルネックになりつつあった。また、このアクセス回線に何らかの障害が起きた場合には、最悪の場合、拠点間通信が一切できなくなるという問題が生じてしまうことも予想された。
そこで行われたのが、今回の大幅刷新だ。最大の特徴は、これまでバラバラだった広域イーサネットとIP-VPNを相互接続する「インターワーク」の仕組みを取り入れていること。異なる二つのネットワークを、あたかも一つのネットワークのように柔軟に運用することが目的だ。AT&グローバル・サービスが、ネットワークのデザイン、プロジェクト管理、テスト及びパイロットランから拠点展開まで、ネットワークの構築に必要な全ての作業を担当している。新しいWANは、図1のような構成になっている。まず、規模や業務内容にあわせて「広域イーサネットがメインの拠点(本社系拠点・大規模拠点・工場など)」「IP-VPNがメインの拠点(中小規模拠点・工場・関連会社など)」を選別し、それぞれのネットワークへ接続する。通常のデータ通信は、このアクセス回線を用いて行われることになる。このうち、IP-VPNについては従来のサービスをそのまま継続利用するが、広域イーサネットについてはIP-VPNと同じキャリアが提供するサービスへの切り替えが行われた。
※日経コミュニケーション2004年10月15日号 p68から転載
二つのネットワークを相互接続する「インターワーク」は AT&Tが設計し、通信キャリアのデータ・センター内に設置して運用を行っている。
また、バックアップとして、全拠点はフレッツ網で接続している。以前はバックアップ用のアクセス回線としてISDNを利用していたが、トラフィック量の増加に伴い、能力の限界に近づいていたため、Bフレッツやフレッツ・ADSLに切り替え、メイン回線に障害が起きたときにさがみ野研究・情報センターへの接続ができるようにしている。また、このバックアップ用回線をもう一方のネットワークに接続する“たすきがけ”の構成にすることでWAN全体を冗長化し、耐障害性も向上させている。 - WANの要となるインターワークの働き
- 新WANの中で、特に重要な役割を持つのが「インターワーク」の部分だ。広域イーサネットとIP-VPNのそれぞれに接続するルーターと、経路制御を行うルーターの計3台で構成されるもので、広域イーサネットとIP-VPNを直接接続するという役目に加え、WAN内を流れる各パケットの経路をコントロールする働きも行う。特に、メイン回線に障害が起きたときの経路制御では、このインターワークが大切になってくる。通常のデータ通信と、障害時の場合にわけてデータの流れを紹介しよう。
まず、通常のデータ通信ではOSPFやBGP-4といったルーティング・プロトコルにより、最適の経路を利用するように制御している。各拠点からさがみ野研究・情報センターにアクセスする場合には、メインとしている回線(広域イーサネットまたはIP-VPN)をそのまま使うことになる。
一方、各拠点がメインとして利用している回線に万が一の障害が起きた場合には、バックアップ回線のフレッツ網を使ってセンターにアクセスする。しかし、ここで課題となったのは、バックアップ回線として利用しているBフレッツやフレッツADSLが、ルーティング・プロトコルを利用できない仕様になっているためだ。単純に接続に利用する回線を切り替えるだけでは、パケットに付与されたルーティング情報を反映できなくなってしまうのだ。
問題点の解決策としてAT&Tが提案したのが、トンネルを張る方法だ。各拠点のルーターとインターワークの経路制御ルーターの間に、トンネルを張る。ここを経由して、フレッツでは利用できないルーティング情報を経路制御ルーターまで到達させる仕組みだ。そこから先の経路については、ルーティング情報を受け取った経路制御ルーターでコントロールする。
メイン回線がIP-VPNの拠点の場合を例に、データの流れを説明すると、次のようになる。この拠点のメイン回線に不具合が生じた場合には、まずバックアップ用のフレッツ回線を利用し、データを広域イーサネット経由でインターワーク内の拠点制御ルーターに送り出す。さらに拠点制御ルーターは、IP-VPNと広域イーサネットのうち、より広帯域の回線を使ってさがみ野研究・情報センターにデータを送る設計となっている。こうすることで、経路が複雑になりすぎることを避けながら、業務効率を落とさない対応ができるようになっているのだ(図2)。

※日経コミュニケーション2004年11月15日号 p96から転載
このように、インターワークは新WAN全体の重要なポイントになっている。設計・構築にあたっては、AT&Tのエンジニアたちが起こり得るトラブルのパターンを様々な角度から洗い出し、その一つ一つに対応策が採られている。 - 新しいWANの構築で得られたメリット
- インターワークを使い、別々に運用していた広域イーサネットとIP-VPNを組み合わせ、柔軟なネットワーク構成を実現した森永乳業の新ネットワーク。この仕組みを利用することで、いくつものメリットを生み出すことに成功している。
まず最初に挙げられるのが、当初の目的でもあった「業務効率のアップ」だ。異なるネットワークに接続した拠点同士の通信も、インターワークを通じて直接行えるようになった。さがみ野研究・情報センターへのアクセス回線がボトルネックになるという状況を避けることができた。大幅刷新後のWANは、ABC(Activity Based Consting:活動基準原価計算)という考え方を採用し、業務の効率化に取り組んでいる同社にとって望ましいレスポンスを持ったWANに生まれ変わっている。
次のメリットは、“たすきがけ”構成による冗長化を採用したことで、WAN全体の耐障害性がアップしていることだ。バックアップ回線にフレッツ網を使っていること、インターワーク内の経路制御ルーターがルーティング・プロトコルを効率よく利用できる設計されていること、などにより、万が一の場合にも業務効率が落ちない点は大きな長所といえる。また、運用監視にはAT&TのiGEMS(integrated Global Enterprise Management System:ネットワーク統合運用管理システム)が使われていることに加え、AT&Tのオペレーション・センターから、WANの状況を24時間監視する仕組みも取り入れており、予期できないトラブルへの対応も迅速に行えるようにしている。
さらに、コスト削減も実現した。実は、バックアップ回線に使うBフレッツやフレッツ・ADSLは、IP電話の内線網としても利用されている。音声データのデータ経路はインターワーク内の経路制御ルーターによってコントロールされる仕組みだ。それまで利用していた音声VPNサービスから切り替えることで、大幅なコスト削減を実現、今後社内にIP電話サーバーなどを構築することで、さらなる削減ができる見通しだ。なお、データ通信用のメイン回線に万が一の障害が発生した場合には、フレッツを利用したIP電話の利用は停止され、バックアップ回線としての帯域を確保する仕様になっている(図3)。ここでも耐障害性を確保する仕組みが用意されているわけだ。

※日経コミュニケーション2004年11月15日号 p97から転載
森永乳業の新ネットワークは、回線の高速化、耐障害性の向上、運用コストの低減という3つのメリットを生み出している。今後も、ネットワークの改良や刷新などが積極的に行われる予定だ。AT&Tも、その重要なパートナーとして協力していく。 - English
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